• あり得ない取り組みの先にあり得ない結果はある。信州安曇野で果樹栽培をしています。

野鳥のための巣箱2026年

 私は毎年野鳥のための巣箱を製作していますが、今年はこれまでのデザインとは一線を画しています。

 巣箱にはカメラを仕掛けて、野鳥が営巣する様子の一部始終をいわば盗撮?していることになります。そのカメラは本来、果物の収穫時期に、収穫物を置いている場所を昼夜監視するためのカメラなのです。果物の収穫は夏から秋なので、それ以外の期間は野鳥の巣箱に流用しているというわけです。

 巣箱におさめるにはやや大きいためかなり無理があります。「野鳥のための巣箱」として(私も含め)多くの方がイメージする形は、郵便受けとか人の家の形に近いものではないでしょうか。形にこだわりながら、大きめのカメラを巣箱におさめようとしていたため問題がありました。例えば、野鳥が巣作りを始めた初期段階では巣箱の底あたりに映像のピントがあっていても、沢山の巣材が集められて容積が増して盛り上がってくるとカメラに近くなりすぎてピンボケ映像になってしまうのです。 それを防ごうとすれば、かなり縦長の巣箱にしなくてはなりません(そのようにした事もありました)。

 ある時、YouTubeで海外での野鳥観察の記録映像を見ていたら、斬新なデザインの巣箱が登場して私は衝撃を受けました。巣箱に対して斜め方向からカメラが向けられる形でした。これまで巣箱は人間の住む家のイメージから大きく外れることはなく、巣穴も巣箱の中央部に配置するようなことばかり考えていました。左右対称であることを当然のように考えていた私です。その映像にある巣箱の巣穴の配置や屋根の形は、そのようなこだわりは一切ありませんでした。

 野鳥は人間の家の形を好んで営巣するのではない。

 なぜ、これまでそんなことに気づかなかったのでしょう。また、これまでのように真上から撮影していた時は、親鳥がヒナに給餌する様子を捉えても、親鳥にヒナが隠されてしまう場合もありました。斜め方向からの映像は親鳥とヒナのこれまでにない表情を捉えることができるかもしれないと考えました。

そこで、今年はAとBの2つのタイプを製作しました。

 シジュウカラやヤマガラを想定した丸穴の巣箱Aと、ジョウビタキを招くことを想定した郵便受け型の巣箱Bです。それぞれ巣箱にたいして、カメラの収納部を斜め方向から差し込んでいるようなイメージです。ちょっと手間がかかりましたが、(被写体である)鳥との距離を取ることができるはずです。

 巣箱Aには現在シジュウカラが営巣しています。

 ここに至るまでに、巣箱Aにはシジュウカラだけでなく、ジョウビタキやキセキレイが訪れ、巣箱付近ではシジュウカラとジョウビタキが縄張り争いをしていたこともあります。ジョウビタキの方が強そうなイメージでした。「キセキレイ」と書きましたが姿全体を捉えたわけではないので確信は持てません。巣箱の内部まで入って来たのはシジュウカラとジョウビタキでした。写真ではジョウビタキが巣箱Aの内部を内覧中にシジュウカラがやってきて、巣穴から見下ろしているところです。ジョウビタキはもちろん、シジュウカラもさぞ驚いたことでしょう。

内覧中のジョウビタキをジュウカラが覗く

 キセキレイと思われる鳥は、巣穴に頭だけ入れて中の様子をうかがっていました。何度か訪れましたが、一瞬頭を入れてはすばやく数回出したり引っ込めたり。その瞬間は巣箱内部が暗くなるため、カメラに映るその目の付近に少し明るいラインを確認しました。まるでガビチョウのようでしたがそんなに大きくはない。しばらくは「あの鳥はなんだろう?」と考えていました。後になって散歩の途中に毎日見かけているキセキレイだと思いました。キセキレイの全体のイメージはわかっていても細かなところは見みていない私でした。悩みながら目じりに注目して図鑑を眺めていて「あれはキセキレイの顔だ」と、ようやく気付きました。

 写真は4月29日現在、巣箱Aで抱卵中のシジュウカラ。産座に敷き詰められている獣毛は、我が家の愛犬ミルキィーのものではないかと思われます。事実、ブラッシングして集まったミルキィーの毛を、巣箱から見下ろせる木の枝にくくりつけておいたところシジュウカラが持ち去って巣箱に運んでいました。

 巣箱Aでのジョウビタキとシジュウカラの攻防を見て巣箱Bの製作を急ぎました。設置したのは3月24日の事ですが、その翌日の早朝まだ薄暗い5:28にジョウビタキのメスが訪問しました。すぐにジョウビタキが来たことで「これで今年はジョウビタキの営巣開始から観察できるぞ!」と浮かれていた私ですが、ジョビ君、何が気に入らないのか営巣には至っていません。オスとメスが一緒に来ることもありましたので、そのたびに期待を膨らませていた私です。上記の巣箱Bの写真は設置直後に撮影したものですが、数日後に巣箱の開口部をやや狭めています。設置後数日して、向かい側にある物置の屋根にカラスがいる様子を見て、開口部が広すぎてカラスの頭が入るなぁ…などと思い、急遽開口部を狭めました。母屋の軒下に設置していますが、周囲には敵がいます。カラスだけでなく、野良猫やアオダイショウも油断できません。その身体能力と執着力はすごいものがあります。

残念ながら下記映像(開口部を狭く修正後:4月9日)を残して以来、周辺で姿を見ることすらなくなりました。

 

 巣箱Bの方にもシジュウカラが訪問したことがあります。今はジョウビタキの営巣に期待して待つしかありません。

 巣箱Aはシジュウカラが抱卵中ですが、実はこの巣箱、シジュウカラには申し訳ないのですがヤマガラ用のつもりでした。私の愛犬(ミルキィー)の主治医である獣医のT先生はヤマガラが大好き。これまでになく鮮明な画像が期待できると話していましたし、「次回5月の定期健診の受診時には、ヤマガラの様子をリアルタイムでお見せします」などと約束していました。スマホに映し出されるリアルタイム映像はシジュウカラ。私自らハードルを上げたことを反省。

 このタイプの巣箱にも反省点があります。産座が深くなっていると卵が何個あるのか確認できません。最初の卵は奇跡的に確認できましたが、これまでのように真上から撮影した映像であれば、仮に獣毛等で隠されていても、見えるタイミングはあったのです。産卵したおよその時間まで映像チェックで調べることができたのですが、それはかないません。今回のシジュウカラは、産座内部で逆エビ体勢になってもなお周辺を盛り上げています。

 毎年巣箱を作りなおしては、それまでの問題点を改善したつもりでも新たな問題が発生します。そのような状況を前述の獣医T先生に話した時の事、「手術と似ていますね、これでよし!ということがありません」とおっしゃていたことを思い出します。

 これまでに制作した巣箱の例

 巣穴が極端に大きなものがありますが、これはフクロウを想定したものでした。家の近くの電柱の上にフクロウの姿を見て製作したもので、「郵便ポストか?」などと家族にいわれたビックサイズでした。2シーズンほど待ちましたが、営巣することはなく今は断念して撤去しています。

 近くの室山からフクロウの鳴き声が聞こえる頻度が減少しつつあります。特に冬の夜、家の中にいても鳴き声が聞こえることがありとても癒されます。食物連鎖のかなり上位にいるフクロウですが、その数が多いことは、その裾野に広がる小動物や鳥、虫、食草などが豊富である証であり、地域の豊かさを示すともいわれます。地域の高齢化が進むと労力確保の難しさから、除草剤や殺鼠剤などの使用が今以上に進むことが危惧されます。フクロウがいる地域であり続けてほしいと願うばかりです。